以前、友人のホテルのオーナーに宿泊客が来られた時に富士山が見えなかった時のために
写真を提供してもらいたいと依頼されました。
そして、撮りためた写真を季節ごとに並べた30数枚を提供してホテルのフロントの大きなモニターを使い
スライドショーで世界各国から来られたゲストの方々にご覧いただいております。

昨日、ホテルのオーナーから連絡があり、そのスライドショーを観たフランス人のフォトグラファーから
どこかいい撮影ポイントに連れて行って欲しいとの依頼がありました。
その後は直接連絡を取り合ってこの時期にベストな写真が撮れるための提案をしました。

8月の富士山と言えば「赤富士」…提案してサンプル写真を見ていただくと、そこに連れて行って欲しいとのこと。
過去の撮影データから富士山が赤く染まる時間帯をチェックしてホテルを朝4時に出発することを伝え、
「大丈夫ですか?」と尋ねると「何時でも構わない」との返事でした。
よく日本に来られる方なのですが、はるばるパリから写真を撮りに来た彼のために
急遽、撮影ツアーに出かけることになりました。

午前3時、富士山が見えていることを確認してからベースで準備してホテルへ向かいピックアップ。
車で撮影ポイントへ向かう間に東の空が徐々に明るくなってきました。
午前4時半頃に到着して早速、撮影のセッティング。フランス人のフォトグラファーの機材は本格的でした。
今回の撮影ポイントは被写体の富士山がすぐ近くにあり、ほとんど建物や電柱などの人工物がない場所です。
富士山の手前に草原が広がっているのですが、草原のススキの背が高く、少し小高い場所が必要となります。
案内した場所はカメラマンが3人ぐらいでいっぱいになります。
彼をベストポジションに案内し、私は彼の邪魔にならぬようカメラをセットしました。

セッティングを完了してして富士山が赤く染まるのを待ちます。この時はいい雲が出ていました。
夜明け前の富士山
静寂の中で時折、鹿の鳴き声が響き渡っていました。
とても広大な場所ですが、いろいろなポイントを自分の足で探し、ここが一番富士山のバランスが良い場所なのではと思っています。

赤富士になる前にちょっとした『サイン』があります。それは…富士山の山頂が光ることです。
太陽の光が富士山に届き始めるとと山頂にいる登山者からはご来光が見えます。麓からはよくわかりません。
このご来光の時に登山者のみなさんが山頂で記念撮影をします。ご来光を背景に写真を撮るので逆光になります。
そうなるとみなさん一斉にカメラのフラッシュ(ストロボ)を焚きます。
このポイントからは山頂での登山者のフラッシュがバチバチと光るのが肉眼で確認できます。
これが「赤富士」の始まる合図となります。

そして富士山の山頂から徐々に赤くなり始めます。
赤富士が始まる頃
この時期にしか見ることのできない絶景です。
広角のレンズを使って撮影するとエアーズロックやキリマンジャロを彷彿させてくれます。

そしてクライマックスへ。
赤富士
今朝の気温は8℃。まだ8月なのにとても寒い朝でした。
気温は前日にある程度予測ができたのでそのこともフランスの方に伝えておいたのですが、
さすがは世界を馳け廻るフォトグラファー。防寒も完璧でした。

わずか数分しか見ることのできない貴重な赤富士。
今回の提案を素直に受け止めてくれたフォトグラファーも満足げな表情でした。

その後、彼のリクエストで山中湖の湖畔へ。
山中湖の富士山
朝陽の当たる湖面にはモヤが立ち込めて幻想的でしたが、あいにく風が少し吹いていて
綺麗な逆さ富士とはいきませんでしたが…湖越しに美しい富士山を見ることができました。

午前7時頃、ホテルに到着。朝飯前のガイドツアーでした。また一緒に撮影に行こうと固く握手をして別れましたが
その後、メールや海外の写真共有サイトで連絡を取り合いまた来日した時に一緒に出かける約束をしました。
また彼の方からもヨーロッパに来る時には連絡をくれとの嬉しいお言葉をいただきました。

ご夫妻で河口湖に滞在されていて友人の経営する「湖のホテル」に宿泊しています。
ホテルにもとても満足されていました。また彼が来日した時にはその時期のベストな富士山を提案したいと思います。


— 追記 —
ツアー終了後、フランス人フォトグラファーSebastien Durget氏から作品とお礼のメールが送られてきました。
セバスチャンの赤富士

彼の他の作品はこちらからご覧ください。